一般社団法人人的資本経営推進協会(所在地:東京都港区、代表理事:野澤 比日樹、佐々木 裕子、松林 大輔、以下 人的資本経営推進協会)は、「人的資本経営サミット2024〜人材戦略変革のリアル:人的資本を駆使する〜」を2024年11月27日(水)に開催いたしました。
本サミットでは、HR領域の有識者19名が登壇。最新の政策、企業による具体的な取組み事例、投資家との対話などを通じ、多様な視点から、企業が人的資本経営を推進するためのアイデアを模索しました。
また、サミット内で行われるネットワーキングを通して、来場者、登壇者、スポンサー、後援団体、当団体メンバーとの対話を通じて、多様な視点で人的資本経営を考える機会となりました。
サミット当日は、上場企業のCHROを中心に168名の参加者(※登壇者含む)にご参加いただき、オンラインでは1,000名以上の参加登録、当日は773名にご視聴いただき大盛況となりました。
そして第2回目の開催となる今回は、一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤 邦雄 氏、株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行役 グループCHRO兼グループCDO 上ノ山 信宏 氏、富士通株式会社 取締役執行役員SEVP CHRO 平松 浩樹 氏、SCSK株式会社 執行役員 人事分掌役員補佐(DEIB・Well-Being推進担当)河辺 恵理 氏など、垣根を越えた幅広い立場の方々19名にご登壇いただき、全6テーマのセッションを行いました。
さらに今年も、登壇者と参加者の対話を通じた、人的資本経営を推進するためのアイデアやヒントを生み出す場としてネットワーキングも行いました。
どのセッションも、人的資本経営を推進するための素晴らしい知見とアイディアに溢れ、参加者からは「次回も開催して欲しい」というお声を沢山いただきました。
参加者のお声(来場者 / オンライン視聴者)
当日の様子
冒頭は、当団体理事 田中 伸明と日比谷 尚武による名刺交換を実施した後、当団体の代表理事である野澤 比日樹より開会の挨拶をさせていただきました。
はじめに、日本社会が直面する「労働人口の減少」「スキルギャップ」「熱意ある社員の割合」等の課題について、データを用い、参加者の皆様と改めて課題認識を共にしました。
また、「課題」は、課題であると同時に伸び代でもあり、現状を悲観するのではなく、共に知恵を絞り、実践し、共有する、という本サミットの狙いや意義についても発表いたしました。
例えば、「熱意を持って働く社員の比率」が5%から50%となれば、日本は再び活気溢れる輝く社会へと繋がる可能性についても言及し、未来への希望を紬ぐ1日となることを願い、開会を宣言いたしました。
13:10-13:55「日本の未来を創る人的資本経営の新潮流」のセッションでは、人的資本の第一人者である一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤 邦雄 氏とパーソルホールディングス株式会社 サステナビリティ本部長 兼 コミュニケーション本部長 村澤 典知 氏が登壇。パネルディスカッションを行いました。
本セッションでは、「人的資本経営の実践・開示におけるストーリー」の重要性が語られました。
「ステークホルダーの心を動かすストーリー」の実践として、「演繹的ロジックツリー」という言葉で表現された、最終的に企業が目指す姿(使命)からバックキャストして、社員の在り方や必要なスキル等を考える事例について解説いただきました。また、「人的資本経営」は、「人材難」等の総論の現象を「個別のテーマに変換し、解決を目指すことができる手段である」という希望ある考え方や事例も多数共有されました。
14:00~14:45のセッション「人材難を乗り越える」では、株式会社みずほフィナンシャルグループの執行役・グループCHRO兼グループCDOの上ノ山信宏氏、SCSK株式会社の執行役員・人事分掌役員補佐(DEIB・Well-Being推進担当)の河辺恵理氏、そして株式会社リンクアンドモチベーションの組織開発本部 企画室 エグゼクティブディレクター冨樫智昭氏(モデレーター)がディスカッションを行いました。
セッションは、事業環境が大きく変わる中で、中長期的に採用が難しくなるという危機感を背景に、両社が人材における理想的なポートフォリオを早くから考え、長期的に取り組んでいるという話題から始まりました。その熱心さから、強い危機意識を持っていることが伝わりました。
SCSK株式会社では、人材の定着を目指して,専門人材の育成やリスキリング(スキルの再教育)に積極的に取り組んでいます。また、事業戦略を立てる際には収益性だけでなく、「社員の能力を高められる事業かどうか」を軸に戦略を立案。このような取り組みを約10年かけて続けているとのことです。さらに今後はデジタル人事に力を入れ、データを活用した新しい取り組みを進める予定で、さらなる進化が期待されています。
みずほフィナンシャルグループでは、人事戦略を親しみやすい「かなで」という名称で展開しています。従来の「事業側は人事を考えない」という考え方を改め、事業部門でも人事を重視する「戦略人事」を組織に浸透させる取り組みを進めています。このような変化には一部で反発もあるものの、長期的な視点で取り組みを進めています。また、従業員には自律的な行動を促すよう取り組んでいるとのことでした。
最後に、人材難という状況はネガティブに捉えられがちですが、人事担当者にとって「人員削減」というつらい仕事を減らすチャンスでもあります。この状況をポジティブに捉えて行動する企業が増えることで、日本社会に良い事例がもっと生まれるのではないか、という期待を込めたセッションでした。
14:50 - 15:35「推進現場のリアル」のセッションでは、株式会社アイスタイル 執行役員CHRO 勝並 明子 氏、株式会社SHIFT 人事本部VPoHR 上岡 隆 氏、iYell株式会社 執行役員CHRO 伊東 拓真 氏(モデレーター)がディスカッションを行いました。
本セッションでは、人的資本経営の実践を担う3名の人事責任者で且つ人的資本経営推進協会が主催するコミュニティARCHでの学びも交えて、現場で感じている課題や取り組みを共有し合いました。実際の事業推進や従業員との対話で直面する “泥臭い” 現実を掘り下げながら、経営と人事を結び付けるための工夫やデータ活用の事例が紹介されました。
「アットコスメ」を中心に事業を展開する株式会社アイスタイルは、創業から上場、さらには再成長期に至るまで、組織の変化や従業員の期待値調整に苦労してきました。勝並氏は事業部門出身の知見を活かし、人事でも経営戦略とリンクした施策の重要性を強調。特に「気づきのマネジメント」を掲げ、サーベイデータをもとに上司と部下の対話を改善し、人が成長を実感できる組織づくりに注力されています。
ソフトウェアテストからDXまでITサービスを広く手掛ける株式会社SHIFTは、急激な規模拡大とともに人的資本経営を推進してきました。上岡氏は、人事を“街”に例えて「人が街に入り、そこでどう活躍し、長く定着するか」を考え、LTV(生涯価値)を用いて投資対効果を測定。社員全員から収集する膨大なデータを軸に、解像度を上げながら事業と人事を連動させているとお話いただきました。
iYell株式会社は、スタートアップでありながら、人と組織に強くコミットしエンゲージメントを高める経営を実践しています。伊東氏からは、人事担当は事業部門の視座を持つことが肝要であるとし、現場と対話しながらデータ活用を進めることで、経営と人事の橋渡しを担うべきだというお話をいただきました。
3名が共通して挙げた要点は、人的資本経営を機能させるうえで「経営戦略との連動」と「現場感のあるデータ活用」の両立が欠かせないという点です。経営との対話においては、単なるサーベイや定量指標だけでなく、事業理解と“泥臭い”コミュニケーションが重要とされました。今後も規模やフェーズの異なる企業同士がリアルな事例を共有し合うことで、人事が“現場から経営を支える”知見を深化させ、人的資本経営による企業価値向上を実現できると期待される内容のセッションでした。
15:55 - 16:40「リスキリングによる事業変革の推進」のセッションでは、富士通株式会社 取締役執行役員SEVP CHRO 平松 浩樹 氏、三井住友トラストグループ株式会社 執行役常務 藤沢 卓己 氏、株式会社カオナビ 代表取締役社長 Co-CEO 佐藤 寛之 氏(モデレーター)がディスカッションを行いました。
本セッションでは「リスキリングによる企業変革の推進」をテーマに、先進的な取り組みを行っている2社が、自社の取り組みや試行錯誤のリアルを語っていただきました。日本の労働人口減少などを背景に採用環境が厳しいなか、既存社員の学び直しを通じた企業変革が求められています。両社が実践するリスキリング戦略の要諦は、経営戦略と従業員のキャリア自律をいかに結び付けるか、そのうえでいかに投資対効果を測定し、現場の協力を得るかにあると述べられました。
もとは製造業に近いIT企業だった富士通株式会社が、グローバルDXカンパニーへと変革を進めるにあたり、求められるスキルセットが大きく変わってきています。そこで「人的資本価値向上モデル」をもとに、将来の事業ポートフォリオに必要な人材像を明確化。採用・配置・育成などへの投資を一体で検討し、リスキリングを推進しています。単なる教育ではなく、ビジネス成長の視点から「どのロールに何を学ばせ、どう評価するのか」を具体化し、経営層との合意形成に成功した点が鍵であったとお話いただきました。
三井住友トラストグループ株式会社は、信託銀行の強みを活かしたグループ経営の変革を目指すなか、従業員の働き方やキャリア形成の在り方が大きく変わり始めています。リスキリングを促進するうえでは、従業員に「自らのキャリアオーナーシップを持たせる」ことが重要だと強調。デジタルリテラシー向上から高度な専門性の開発まで、多層的なプログラムを用意し、一人ひとりが学びたい領域を主体的に選べる仕組みを整えています。また、配置転換や評価との連動も図り、学んだスキルを事業価値に直結させる視点が特徴とお話いただきました。
両社とも、リスキリングを“社員の自律的な成長”と“企業ビジョンの実現”を結ぶ重要施策として位置付けています。ポイントは、(1)経営戦略や成長ポートフォリオから逆算し、人材要件を具体的に定義する、(2)学びの成果を可視化し、評価や配置に反映させる、(3)現場レベルでの理解を得るための仕掛けとコミュニケーションを徹底する、の三つに集約されます。これらを人事がリードして地道に実践し続けることで、従業員個々のキャリア自律が企業変革の大きな推進力へとつながっていくと期待される内容のセッションでした。
16:45 - 17:30「ガバナンス、日本企業への期待」のセッションでは、野村アセットマネジメント株式会社 常務 CIO 村尾 祐一 氏、株式会社チェンジウェーブグループ エグゼクティブアドバイザー 宇田 左近 氏、JPモルガン証券株式会社 チーフエコノミスト / 当団体 理事 藤田 亜矢子(モデレーター)がディスカッションを行いました。
本セッションでは、中長期的な視野にたった人的資本経営を行う上での取締役会の果たすべき役割や、取締役会のメンバーへの投資家からのアクセスの重要性が熱く議論されました。
ガバナンスや人的資本経営は、中長期的な取り組みを必要とする課題であるため、執行だけでは容易にすすまないことも多いことから、取締役会がよりイニシアティブをとって進めていくべき課題だとの問題意識が提示されました。投資家サイドからも、社外取締役を含めた取締役会のメンバーとの対話を通じたより中長期的な経営の方向性を認識できるようになることが、投資判断においては重要だとの認識が共有されました。これらの議論は、企業と投資家が対立するものではなく、共に協力し合う形で日本の企業ガバナンスを向上させていく可能性を期待させるものになりました。
17:35 - 18:20「経営幹部登用におけるDEI推進」のセッションでは、株式会社リクルートホールディングス執行役員 経営企画本部PR 兼/ 株式会社リクルート執行役員 人事、広報・渉外、サステナビリティ 柏村 美生 氏、ソフトバンク株式会社 執行役員コーポレート統括 人事本部本部長 兼 総務本部本部長 兼 Well-being 推進室室長 源田 泰之 氏、エール株式会社 取締役 篠田 真貴子 氏がディスカッションを行いました。
経営幹部の多様性確保は、「極めて重要だが一筋縄ではいかないテーマ」であるという共通認識に立ち、本質的には何のために推進するのか、そしてその推進の肝となる実践アプローチとは何かについて、活発な意見交換が行われました。
クロージングでは、当団体代表理事である佐々木 裕子、野澤 比日樹、理事 藤田 亜矢子
が閉会の挨拶をさせていただき、本イベントは終了しました。
ネットワーキングでの様子はこちらの写真の通りです。登壇者と参加者が人的資本に関するテーマをもとに意見を交わせる有益な時間を設けることで、未来の人的資本経営のアイディアを模索する時間となりました。
【後援】
金融庁
経済産業省
一般社団法人日本経済団体連合会
一般社団法人日本能率協会
一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会
HR NOTE(jinjer株式会社)
【協賛】
株式会社カオナビ
株式会社グロービス
株式会社コテラス
コミューン株式会社
株式会社ストリートスマート
株式会社SmartHR
ドコモgacco
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
株式会社日本経済新聞社 人財・教育事業ユニット
パブリックゲート合同会社
森ビル株式会社
株式会社ラフール
株式会社リーディングマーク
株式会社リンクアンドモチベーション
株式会社ログラス
株式会社ワンキャリア
◾️伊藤 邦雄 氏
一橋大学CFO教育研究センター長
◾️伊東 拓真 氏
iYell株式会社 執行役員CHRO
◾️宇田 左近 氏
株式会社チェンジウェーブグループ エグゼクティブアドバイザー
◾️柏村 美生 氏
株式会社リクルートホールディングス執行役員 経営企画本部PR
株式会社リクルート執行役員 人事、広報・渉外、サステナビリティ
◾️勝並 明子 氏
株式会社アイスタイル 執行役員CHRO
◾️上岡 隆 氏
株式会社SHIFT 人事本部VPoHR
◾️上ノ山 信宏 氏
株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行役 グループCHRO兼グループCDO
◾️河辺 恵理 氏
SCSK株式会社 執行役員 人事分掌役員補佐(DEIB・Well-Being推進担当)
◾️源田 泰之 氏
ソフトバンク株式会社 執行役員コーポレート統括 人事本部本部長 兼 総務本部本部長 兼 Well-being 推進室室長
◾️佐々木 裕子
一般社団法人人的資本経営推進協会 代表理事
株式会社チェンジウェーブグループ 代表取締役社長
◾️佐藤 寛之 氏
株式会社カオナビ 代表取締役社長 Co-CEO
◾️篠田 真貴子 氏
エール株式会社 取締役
◾️冨樫 智昭 氏
株式会社リンクアンドモチベーション 組織開発本部 企画室 エグゼクティブディレクター
◾️野澤 比日樹
一般社団法人人的資本経営推進協会 代表理事
株式会社ZENKIGEN 代表取締役CEO
◾️平松 浩樹 氏
富士通株式会社 取締役執行役員SEVP CHRO
◾️藤沢 卓己 氏
三井住友トラストグループ株式会社 執行役常務
◾️藤田 亜矢子
JPモルガン証券株式会社 チーフエコノミスト
一般社団法人人的資本経営推進協会 理事
◾️村尾 祐一 氏
野村アセットマネジメント株式会社 常務 CIO
◾️村澤 典知 氏
パーソルホールディングス株式会社 サステナビリティ本部長 兼 コミュニケーション本部長